日本経済新聞 (2016年8月20日)
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO06301460Q6A820C1EA1000/
人口の高齢化に伴い、医療と介護にかかる費用負担が重くなる一方だ。質を保ちながらも、費用を抑える改革が求められる。その難しい課題に都道府県や市町村が挑みつつある。住民が安心して暮らせるよう、尽力してほしい。
2014年に成立した医療介護総合確保推進法に基づき、都道府県は「地域医療構想」をつくることになった。都道府県内を複数の地域に分け、人口予測から地域ごとに、どのような機能の医療機関がどの程度必要かを定める。
今のままでは人口に対して病院が多すぎたり、同じような機能の病院がいくつも存在し続けたりで、効率化が期待できないためだ。今年度中に大半の都道府県が構想を策定し、その実現を目指す。
地域の実情をしっかり見据え、実のある構想をつくってもらいたい。実現に向けては病院の再編も必要になり、一筋縄では進まないと予想される。行政の最重要課題の一つとするぐらいの覚悟で臨むべきだろう。国も関係省庁が一体となり、支援してほしい。
介護分野では市町村の役割がこれまで以上に重要になる。医療介護総合確保推進法では、介護の必要度合いが少ない軽度の高齢者向けサービスの一部を、全国一律から市町村独自のものに切り替えることを定めた。
その際には、ボランティアやNPOなどによるサービス提供も活用して効率化を目指す。多くの市町村は17年4月までに事業を始めるべく、準備中だ。
奈良県生駒市は、独自の介護予防事業をすでに始めている。筋力を鍛える教室をのぞくと、トレーニング機器を使う人も、指導する人も高齢者であることに驚く。
指導しているのはこの教室の卒業生だ。経験者だからきめ細かい指導ができ、自分自身の活力維持にもなる。教わる側の高齢者も「頑張れば、指導できるぐらい元気になれる」と張り合いが出る。
これらの事業によって高齢者に占める介護が必要な人の割合が下がってきた。市の担当者は「市職員が本気を出せば、地域を変えていくこともできる」と意気込む。
全国にはほかにも先進的な取り組みをする市町村がある。これらも参考に、全自治体が知恵を絞り、競い合ってもらいたい。
高齢者には医療と介護が共に必要だ。両者を一体として効率的に提供するため、都道府県と市町村の連携も強化してほしい。