ソフトバンクグループのリアライズ・モバイル・コミュニケーションズ(東京)は21日、MR(複合現実)を使った歯科治療支援システムを報道陣に公開した。歯科医がゴーグル状の端末を通して見ると、実際の患者の歯にコンピューターグラフィックス(CG)が重ねられ、神経や血管の位置などを確認しながら治療できる。MRはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)とともに需要拡大が見込まれており、特にビジネス向けの活用が期待されている。
新システムは、歯科医療機器を販売するモリタ(大阪府吹田市)と共同で開発した。
患者の上部に複数のカメラを設置して位置を把握することで、CT(コンピューター断層撮影)などで得たデータを重ね合わせられる。神経を除去するために歯を削る治療や、失った歯の代わりに人工の歯根(インプラント)を埋め込む治療などに有用とみられる。穴を開けたり削ったりする場合、深さや方向が当初の計画通りに進んでいるかも確認しながら施術できる。MRの活用についてモリタの森田晴夫社長は「診療に使えるようなシステムは世界初だ」と強調した。将来、治療への活用が実現すれば、これまではそれぞれの歯科医が経験と勘に頼っていた部分を可視化できる。経験の浅い歯科医にも高い水準の治療が可能になり、サービスの質の底上げにつながるという。もっとも、実際に治療に使うには改良を重ね、医療機器として公的に認められるようにする必要がある。このため、まずは歯科医の教育向けシステムとして開発を進める。平成31年ごろに大学に納入するなど商用化し、その後、治療への活用を目指す方針だ。
ゲームなどに使われているVRは、仮想世界への没入感が特徴で、「現実と遮断されるために外の情報は扱いにくい」(リアライズの勝本淳之取締役)という。これに対しMRは、ゴーグル型の端末を通して見ると、現実とCGを同じ光景の中に配置できるため、業務支援などにも有用だとみられる。ベンチャー企業のGATARI(東京)は、話した言葉を音声認識で文字に置き換え、文字を自由に配置して遠隔での会議などに利用するMR技術を開発している。それぞれの技術の特徴を生かした効果的な使い方を提示することが、市場の拡大につながりそうだ。(高橋寛次)
■MR 「複合現実」の略で、仮想空間に現実空間を再現し、コンピューターグラフィックスなどの情報を重ねる。ゴーグル状の端末「ヘッドマウントディスプレー」を装着して体験する。現実と仮想空間を重ねるのはAR(拡張現実)と同じだが、MRは現実空間にも処理を加えて見ることができる。
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産経ニュース 2017.4.21
http://www.sankei.com/life/news/170421/lif1704210041-n1.html
実物を見ていないので、いまいちピンとこないのですが、「診療に使えるようなシステムは世界初」ということからも、将来的な臨床応用に期待が高まります。歯科医が経験と勘に頼っていた部分を可視化できるというのは、素晴らしいことですが、歯科医が実際にMRを使いこなすのは時間がかかりそうです。より使いやすいシステムを構築できるか、今後の動向に注目ですね。