高血圧で通院している70代女性が「最近、寝る前に1~2杯梅酒を飲むようになったのよ」と言います。女性はこれまでお酒をほとんど飲まなかったのですが、「適度な飲酒が健康に良い」と友人から聞き、それならばと飲むようにしたそうです。適度な飲酒は、全く飲酒しないことに比べて、認知症や心臓病になりにくく、より長生きできるといった医学的な研究報告があり、飲酒は適度ならむしろ健康に良いと考えられてきました。しかし最近、これまでの研究結果の多くにデータの偏りがあるのではないかと指摘されるようになりました。例えば、調査時点で「飲酒しない」グループには、過去に飲酒歴があって健康上の問題など何らかの事情で禁酒に至った人も含まれ、不健康な人が多い可能性があります。この人たちは、実際は飲酒の影響を受けているのですが、それが調査に反映されていないわけです。
また、高齢になるまで飲酒を続けられるのは、もともと健康だからかもしれません。つまり、適度な飲酒をしたから長生きしたのでなく、もともと健康だから飲酒ができたということです。こうした観点から酒量と死亡率の関係を調べたさまざまな研究を見直した結果が昨年、報告されました。それによると、少量の飲酒をする人の死亡率は、生涯飲酒しない人と同等でした。心血管病に限って調べた死亡率でも、少量の飲酒をする人が、長期間飲酒しない人に比べ、低くないとの結果でした。この2つの調査では、過去に飲酒歴がある人が、その後にやめた場合、飲酒しない人より死亡率が高くなっていました。認知症についても、適度な飲酒で予防できるわけではなさそうです。英国で約500人を30年間追跡し、飲酒量と認知機能の関係を調べた研究が今年6月に発表されました。これによると、酒量が多いほど語彙テストの結果が悪く、記憶など認知機能に関係する脳の海馬という部分が萎縮していることが分かりました。適量とされる程度の飲酒でも、全く飲まない人に比べると良い結果ではありませんでした。これらの結果から、適量とされる飲酒も、本当は健康に良いとはいえないかもしれません。
冒頭の女性には、最近の研究報告を伝え、「好きで飲むならいいですが、無理に飲んでも良いことはないですよ」とお話ししたところ、どうやら飲むのをやめたようです。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)
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産経ニュース 2017.8.22
http://www.sankei.com/life/news/170822/lif1708220028-n2.html
私の中では常識であった、「少量の飲酒は健康にいい」は、少し考えないといけないかもしれません。今回示されたデータだけで、結論は出せないと考えられますが、「健康のためにお酒を適度に飲む」という事については、控えた方がいいのかもしれませんね。さらに詳しい研究が報告された時には、またピックアップしようと思います。