アピタル http://apital.asahi.com/article/kiku/2013012200011.html
いきなりですがクイズです。
次の4つの「薬」、よく効く順にならべるとどうなるでしょう?
A. 鎮痛剤とだけ書かれたプラセボ
B. 鎮痛剤の有名ブランドがパッケージに書かれたプラセボ
C. 鎮痛剤とだけ書かれたアスピリン
D. 鎮痛剤の有名ブランドがパッケージに書かれたアスピリン
実際に、頭痛の改善の割合を評価の指標として行われた研究報告があります。
それによると、クイズの答えは、D>C>B>Aとなりました。
この実験の興味深い点は、AとBは同じプラセボの錠剤でも、ブランドネームの有無によってプラセボ効果の大きさが変わってきている点です。
つまり、プラセボ効果の強弱は、プラセボ自体とは関係のない要素を含んでいる可能性があります。
その点を指摘した研究者らは、この現象を「意味反応(meaning response)」と呼んでいます。
プラセボ効果にかぎらず、ヒトの脳はブランドに反応してしまうものなのかもしれません。
脳科学の視点でも興味深い実験がおこなわれています。
ワインを飲んだとき、functional MRIという装置で脳の反応を調べると、特定の部位が活動することがわかりました。
この部位は、内側眼窩前頭皮質という知的快楽を生み出す場所でした。
つまり、ワインを飲むことはヒトにとって悦楽、快感だということになります。
そして、この実験では、被験者にワインの飲み比べをしてもらったところ、同じワインがグラスに入っているにもかかわらず、教えられた価格が高ければ高いほど、内側眼窩前頭皮質が強く活動することがわかりました。
高価な商品、権威・カリスマ、オーラなどなど、ヒトの脳は、生まれつきの性質として「ブランド」に反応するように作られているのかもしれません。
ですが、ヒトが持つこの性癖、性質を悪用している健康情報を目にすることがあります。
以前、このコラムの連載「虎の威を借る『健康情報』」でも取り上げた、「大学教授」「医学博士」など肩書きの権威を傘に着ているだけの無責任で根拠のない健康情報は、その代表例かもしれません。
さらに、広告に登場する「大学教授」「医学博士」が、商品の販売企業から多額の謝礼もらっているケースなど利益相反の問題も指摘されています。
これでは、ブランドによるプラセボ効果の水増しで、何か誤魔化された感じがします。
さらに、販売されている商品の価格が、ブランド価値を高めるためなのか、不必要に高めに設定されていることがあります。
しかし、残念ながら、現在の日本では、これらの不条理、不合理、不道理を取り締まる法律やルールはないのが実情です。
健康・医療とは関係ありませんが、昨年、芸能人が自らの人気・ブランドを生かし広告塔となって、詐欺事件にも発展した「ペニーオークション」「ステルスマーケティング」の問題でも、事実に反する書き込みをしてファンを騙したにもかかわらず、その芸能人は罪に問われていません。
一方、海外では、信頼の醸成、法令の順守、消費者利益の優先、透明性の確保などを掲げて、タレントが登場する広告、消費者による経験談・体験談、権威者の意見など、いわゆる口コミマーケティングがどうあるべきかについて議論を重ねています。
昨年話題になった例としては、サッカーのウェイン・ルーニー選手が、スポーツメーカーのナイキに関しておこなったTwitterでのツイート(つぶやき)が、英国当局から問題視されたケースがあります。
英国当局は、このツイート(つぶやき)のなかに「スポンサー企業の意向を受けたツイート(つぶやき)である」ことを明示する文言が無かったことが法令違反に当たると判断しました。
そして、ナイキが当時展開していたキャンペーンに対して停止を命じています。
話が横道にそれました。
もう一度、「ブランド」と「プラセボ効果」との関係について考えてみます。
前回のコラムで紹介したとおり、近年、神経学的にもメカニズムが解明されつつある「プラセボ効果」。
しかし、今回紹介した意味反応(meaning response)としての「ブランド」の影響力。
そして、その「ブランド」のウラには何やら怪しい影が見え隠れしている現状。
ここで、誤解しないで欲しいのは、「人は『ブランド』に弱い」ということは、決して、恥ずべきこと、体裁が悪いことなどではありません。
ましてや否定されるべきことでもありません。
「人間の脳は本能としてブランドに反応するようにできている」
この事実を認めた上で冷静に情報に接したとき、その情報の取捨選択や自分の行動に関する判断・決断に、客観性が備わってきます。
そして、そのことを理解した上での「プラセボ効果」は、人にとって有益なものになるのではないかと個人的には考えます。
>>>人はブランドに弱いのですね。