WEB RONZA
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中略
ところで、ドイツでは医師を目指す志願者を対象としたテストTMS(Test f?・r Medizinische Studieng?・nge)があるのをご存知だろうか。医学部に入学を希望しているが、成績がそこまで届かない、しかし医者としての適性が非常に高い人々を入学させるための試験である。このTMSで好成績を収めると、大学進学の要となる入学資格試験成績に加算され、学業優秀者でなくても医学部合格への道が開けるのだ。
■ドイツの大学受験
ドイツでは日本のような大学入学試験はない。ギムナジウム(日本の中高一貫教育)の卒業試験アビトゥアに合格(最高点1.0から4.0まで)すれば、大学入学資格を得たことになる。大学進学希望者は、ギムナジウムの最後の2年間か3年間(学校や州により異なる)の成績とアビトゥアの成績を一括した書類を願書として直接大学へ提出し、合否の結果を待つ。
ただし、医学部、歯学部、薬学部、獣医学部志願者は、大学ではなく、まずドルトムンドに本拠を構える中央学籍配分機関Stiftung f?・r Hochschulzulassung(SfH)へ願書を提出する。SfHは、各大学医学部入学者の一次選考を行う。この選考では、まずアビトゥア成績最優秀者と待機志願者だけを対象とした審査を行い、合格者を決定する(医学部合格者総数の4割)。その後、残り6割の進学者は、各大学の二次選考で合格者を選出する。第二次で不合格の場合、合格するまで待機するか、学部変更をして勉学するなどその対応も各人各様だ。これが一般の医学部受験だが、TMSは、こうした通常の受験では少々学力が足りない学生に、医学部入学の門戸を開くために設立された制度だ。中略-テスト内容は、医学・自然科学の基礎的理解、パターン認知力、図表読解力、空間把握力、記憶力、視感覚、集中力など。テストは正味5時間ほど。中略-入試の判定において、受験者のTMS成果をどう扱うかは大学に一任されている。 TMSの得点を重視する大学もあれば、参考にしない大学もある。
■医師に向いているのは学業優秀者だけとは限らない
現在、14大学の医学部、7大学の歯学部でTMSテストの結果を配慮し、入学選考を行っている。この選考の際に、TMSで加算された成績が効力を発する。中略-ちなみに、マインツ大学医学部昨年の合格者内訳は、アビトゥア成績のみの志願者51%、TMS成績を加算した志願者49%という。中略-
ハイデルベルク大学の医・歯学部学生部のユタ・ベッヒャー氏は「アビトゥア最高点1.0保持者が必ずしも将来優秀な医師になる保証はどこにもないし、医師に向いているとは限らない」と、説明する。逆に、成績はそれほどでなくても、熱意があればいい医者になる可能性は高い。TMSは、性別に関係なく優秀な医師を教育することを目的とし、医学部の門戸を広げる寛大な評価法である。
■優秀な人材育成には寛大さも必要
フライブルク大学歯学部で勉学中のA君によれば、「友達のB君は、アビトゥア1.8でTMSを受けた。でも結果が思わしくなく、医学部への進学はいまだ出来ずにいる。同じくアビトゥア1.8の女友達Cさんは、TMS得点が高かったことが幸いし、念願のハイデルベルク大学医学部にストレートで合格した」という。
ちなみにA君はTMSを受けなかったそうだ。「僕のアビトウアは1.4。医学を希望する学生の成績はそのほとんどが1.0から1.2だったので、合格はかなり難しいと思った。第一志望のフライブルク大学歯学部合格枠はわずか40名(2009年)で最難関だった。SfHの選考では不合格だったが、運よくフライブルク大学の選考で合格した。ギムナジウム在学中に物理や数学などの全国競技会に参加して好成績を収めたこと、生徒会役員や余暇時間でのボランティア活動がプラスになったのだと思う」と語る。
フライブルク大学学生部イルムガード・ストライト-ライン-ボーム氏は、「自主的な社会福祉活動や数学・物理など競技会入賞、看護士や介護士の資格保有なども配慮して合否を選考する」と語る。A君もその対象となったのだろう。
アレンスバッハ世論調査研究所が行った2011年意識調査によれば、ドイツで一番人望を集めている職業は医師だという。医学部は毎年人気の高い学部でもある。従って、どうしても成績優秀な秀才ばかりが集まりがちだ。しかし、TMSという寛大な評価法により、医師として必要な、成績意外の素養を汲みとるシステムは、日本も学ぶべきところがあるのではないだろうか。
>>>この考え方、興味深いですね。確かに試験に強いだけでは、名医にはなれないかもしれせん。