加齢や、脳梗塞などの病気が原因で食物をのみ下す嚥下(えんげ)機能に障害のある人のために考案された「嚥下食」が充実してきた。のみ込みやすさに加え、一般の料理と外見も味もそっくりに。患者や家族は「食べる楽しみを取り戻せた」とさらなる進化を期待している。
500万人が障害
「嚥下障害は誰でも起こり得る。超高齢社会を迎えた日本では、今後も患者数は増加するだろう」。東京都内で開かれた嚥下食を推奨するシンポジウムで、言語聴覚士の柴本勇さんが警鐘を鳴らした。嚥下とは、食物を口から咽頭、食道、胃へと運ぶまでの一連ののみ込み運動のこと。食物が喉を通ると反射的に筋収縮が起きて声門が閉じ、食物が気管などに入るのを防ぐ。だが、加齢、脳梗塞、喉頭がんなどが引き金となって嚥下機能に障害が出ると、食物が気管や気管支に入って引き起こされる誤嚥性肺炎などになる可能性がある。柴本さんによると、現在、後期高齢者(75歳以上)の30%に当たる500万人が嚥下に障害を持ち、10年後の平成39年には患者数は32%増の660万人に上ると見込んでいる。
QOLを高める
のみ込みを改善し、生活の質(QOL)を高める手段として近年期待されているのが進化した嚥下食だ。ペースト状のミキサー食やきざみ食のレシピに、さらにひと手間加え、外見や味が本物そっくりとなるように再構築したものだ。素材も可能な限り本物と同じものが使われている。栄養食品メーカー「ニュートリー」(三重県四日市市)が28年に募集したオリジナル嚥下食のレシピコンテストには全国の病院、福祉施設、個人から115点のレシピが寄せられた。中でも目を引くのが、エピソード部門で最高賞のレシピ大賞に輝いたロールケーキ「Happy ミニロール Cake Tower!!」。大阪府守口市の主婦、江端左恵子さん(50)が母、真澄さん(74)と協力し、10年前に喉頭がんで嚥下が困難となった父、重夫さん(77)の誕生日を家族で祝おうと考案した。スポンジケーキ、牛乳などをゲル化剤と一緒にミキサーにかけるなどして、カスタードやスポンジムースを作った。左恵子さんは「ピンク色は紫イモ、緑色は抹茶で色付けした。食べてみたいと思えるものを家族で食べ、父も幸せな気持ちになった」と振り返る。
ご当地ものも
コンテストにはご当地ものも登場した。病院や介護施設で実際に入所者に提供されている。盛り付け技術部門の最高賞・レシピ大賞を手にしたのは、介護老人保健施設「サンプラザ長岡」(新潟県長岡市)が考案した「新潟B級グルメ☆タレカツ丼☆」。調理師の水沢慶太さん(33)は「ころもの付いたごっつい肉の外見とは裏腹に、硬さは舌と上顎でつぶせる程度。味もそっくり」と紹介した。また、同部門次点のレシピ賞には、特別養護老人ホーム「とかみ共生苑」(山形市)の「“尾花沢すいか”と“冷たい肉そば”膳」が選ばれ、やはり見た目の酷似が話題に。考案者の一人で調理師の設楽久美子さん(38)は「素材は基本的に本物。山形名物を楽しんでほしかった」と語っている。
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産経ニュース 2017.3.3
http://www.sankei.com/life/news/170303/lif1703030011-n3.html
私の話ですが、年を重ねるにつれ、嚥下力が落ちていることを実感しており、今回、興味深く、この記事を見ました。一昔前までは、嚥下困難な方には、流動食やミキサー食を想像していましたが、今では、これにひと手間加え、外見や味が本物そっくりとなるように再構築した「嚥下食」の需要が高いようです。「食べる」というのは、一つの楽しみです。QOLを改善するには、非常に有用なものとなるかと思います。