既存の全ての抗生物質に耐性をもつ細菌感染が、米国内で初めて確認された。この数年、どの抗生物質も効かない「スーパー耐性菌(superbug)」がいずれ出現すると警告されてきたが、今回のペンシルベニア州の49歳女性の例は、その日が近いことを示唆するものである。「緊急に対処しなければ、抗生物質の限界が来る」と、米国疾病管理予防センター(CDC)のTom Frieden氏は、米ワシントンD.C.で開催されたナショナルプレスクラブのイベントで述べている。今回の患者は命を取りとめたが、耐性が他の細菌にも拡大する恐れがあるという。
女性は、尿路感染症でクリニックを受診した。原因はよくみられる大腸菌への感染だったが、検査では第一選択の抗生物質に対する耐性が認められた。他の抗生物質が奏効したものの、その後の検査で、特定の大腸菌がコリスチンという薬剤への耐性遺伝子をもつことが判明した。AP通信によると、コリスチンは副作用がひどいために1970年代に人気を失った古い抗生物質だが、現在はカルバペネム系抗生物質に耐性をもつ難治性の細菌に対して使用されている。カルバペネムは最後の砦とされる薬剤の1つで、カネバペネム耐性菌がコリスチンに対しても耐性を獲得すると、感染症の治療選択肢はもう存在しないという。
CDCの新興感染症プログラムを監督するBeth Bell氏は、「これは忌まわしいパズルの新たな1ピースである」と述べる。世界ではスーパー耐性菌の症例が既に認められていたが、米国内で発生したのは今回が初めて。米ウォルター・リード軍人医療センター(メリーランド州ベセスダ)の研究グループが今回の感染例を確認し、米国微生物学会の会誌に5月26日報告された。この女性は最近米国外に出ておらず、CDCおよびペンシルベニア州保健当局はコリスチン耐性大腸菌の感染経路の解明に努めている。コリスチン耐性遺伝子はカナダ、中国、ヨーロッパのヒトや動物に認められている。AP通信によれば、米国保健当局は先ごろ米国内のブタでコリスチン耐性大腸菌が見つかったと報告しているが、今回の症例との関連は考えにくいとのこと。(HealthDay News 2016年5月27日)
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ヘルスデージャパン 2016.6.6
http://healthdayjapan.com/2016/06/06/12353/
抗生物質の乱用による耐性菌の発生について、以前のだよりでも紹介させてもらいましたが、抗生物質の最後の砦とされる「カネバペネム」に耐性を持つ、耐性菌が米国で発見されたとのことです。この耐性菌は、アメリカで初めて認められたとのことですが、他国では発見されています。感染経路については不明ですが、日本に上陸したとき、どのように対応をするのでしょうか。「スーパー耐性菌」の出現は遠い日ということには、ならなさそうですね。