http://stb.sankei.jp.msn.com/life/news/140513/bdy14051309000001-n1.htm
産経ニュース
健診で血圧を測るに当たって、正常と異常を区別する境目が、実は明確ではないということをこれまで示してきました。しかし、「だから血圧の健診は意味がない」と言っているわけではありません。血圧が高ければ高いほど脳卒中の危険が高いことや、上の血圧が160以上の人に関しては降圧薬治療によって脳卒中の危険が少なくなることは明確に示されています。160を基準に高血圧の健診をするのは、前々回に示した健診の2つの必要条件を十分に満たすものです。
では、基準を140にした場合はどうでしょう。140以上160未満の人を対象にした研究結果のまとめを見てみます。この研究は、ランダム化比較試験(被験者を、治療を行う群としない群に無作為に割り付け、評価を行う試験)をまとめたメタ分析という質の高いものです。
脳卒中については、降圧治療で100の脳卒中が51まで少なくなるという結果です。脳卒中の危険が半分になるのですから、十分に効果がある結果のようにも思えます。しかし、この論文の著者らは「治療効果は明らかでない」と結論付けています。これはどういうことでしょうか。
脳卒中になった実際の人数を論文から抜き出してみましょう。脳卒中が起きたのは、治療群で3012人中10人、しない群で3049人中20人でした。確かに治療群の脳卒中は治療しない群の約半分ですが、その率は極めて低く、0・6%が0・3%になっているのにすぎません。この試験は2~5年間の治療を検討したもので、上の血圧が140くらいの人は治療してもしなくても数年の間に脳卒中を起こす人はほとんどいないということを示しています。この結果から、上の血圧が140の人に「放置すると脳卒中になりますよ」というのは、少し極端な意見のような気がします。しかし、実際の健診では異常とする境目を140どころか、130、さらには120とどんどん厳しくする傾向があります。これはどういうことでしょうか。
一つには一人でも脳卒中の患者を減らしたいという願いから、より低い値に設定しているのかもしれません。また、境目を低くすることで、より多く必要となる治療薬を公費で提供できる社会の豊かさもあるでしょう。あるいは、より多くの人に降圧薬を飲んでもらいたいメーカーの意向が反映されているかもしれません。つまり、境目は科学だけでなく、社会の状況によって決められているのです。
>>検査項目における「基準値」については、この記事の通りですね。高血圧を160と設定する事については、必要十分条件を満たしていると考えられますが、140については、記事記載の「治療群で3012人中10人、しない群で3049人中20人で、確かに治療群の脳卒中は治療しない群の約半分ですが、その率は極めて低く、0・6%が0・3%になっているのにすぎない」というのは、非常にわかりやすいものでした。「基準値」は、皆に納得してもらえる数値であってほしいですね。