朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/health/tsuushinbo/TKY201211070625.html
高齢になったり脳の病気になったりすると、ものをのみ込む「嚥下(えんげ)」の力が弱くなることがあります。怖いのは、ものが間違って肺に入り、肺炎が起きること。障害をなるべく早く見抜き、嚥下力を鍛えることが大事です。
食事や唾液(だえき)をのみ込むときには、のどの組織や筋肉が気管をふさぎながら、ものを食道に押し込む。これらの動きが悪くなるのが嚥下障害で、栄養不足や、肺に食べ物や唾液などが入って起きる「誤嚥(ごえん)性肺炎」の原因になる。
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健康な人でも、時には誤嚥を起こしそうになる。しかし、気管の入り口にものが入ったところで激しくむせて、空気と一緒に気管の外に出す。
ところが、嚥下力が落ち、食事のたびに誤嚥を繰り返すようになると、むせるだけでは肺への流れ込みを防げない。のどの感覚が鈍り、誤嚥しているのにむせなくなる人も多い。
食べたものがきちんと食道に送られているかどうかを、外から見て判断するのは難しい。正確に把握するには、造影剤をのんでエックス線でビデオ撮影するなどの専門的な検査が必要だ。しかし、日々の生活ぶりから、嚥下障害の兆候を見つけることはできる。
「むせ」やのみ込む時の違和感や肺炎の症状が頻繁にあるときは嚥下障害を強く疑う。また、食事の前後に声が変化したり、のどや胸に不快感をしばしば訴えたりするときも、注意する必要がある。
「むせるというのは、歩いていて道の段差につまずくようなもの」と、浜松市リハビリテーション病院の藤島一郎院長はいう。
頻繁につまずくと、転んで骨折する危険性が高まる。しかし「最近、よくつまずくなあ」と気づいたときに足腰を鍛えたり、転ばない歩き方を意識したりすれば、骨折の予防策になる。
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藤島さんらは「骨折」に当たる誤嚥性肺炎を予防するための「嚥下体操」を考案した
食べる前には首や肩、ほお、舌などを動かし、「パパパ、ラララ」などの声を出し、体の緊張をほぐす。ふだんの生活でも、首やのどの筋力をつける運動をし、発声訓練や息を強く吹く訓練をして、嚥下力や異物をはき出す力をつける。
嚥下障害が重ければ、のどの手術などの治療が必要になる。しかし、軽い症状にまで「肺炎がこわい」と食事を禁じるのは間違いだという。調布東山(とうざん)病院(東京都)リハビリテーション科の大熊るり医師は「誤嚥する危険性を医師がきちんと評価して、食事を続けることが大切」と話す。
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会のサイト「(http://www.jsdr.or.jp/)に載っている「嚥下リハビリ相談窓口」が参考になる。(斎藤義浩)